GUIDE|売却の基礎知識

築25年の実家でも、
ローンは35年付く

築25年の木造の実家。次の買い手のローンは短くなるから安い、と思われがちです。私たちが同じ一軒について都内の銀行3行と住宅ローン会社1社に聞くと、四つとも築年数だけで借入期間を短くする答えはなく、全額の融資もあり得るという回答でした。この一軒について銀行が切っていないなら、建物を「ゼロ」にしているのは何か。誰が買う前提で出た値段か、という軸で、国の指針と調査から整理します。

2026年9月15日時点の情報です。金融機関の回答は、2026年9月に私たちが同じ文面で照会して得たもので、社名は伏せています。公開の商品説明は各社の公式サイトの原文にもとづきます。条件は金融機関・商品・支店・時期・申込む人によって変わりますので、実際の借入では必ず各社にご確認ください。

結論:築25年・木造・所有権・都内の一軒について、都内の銀行3行と住宅ローン会社1社は、いずれも築年数だけで借入期間を切らず、全額の融資もあり得ると答えました。それでも実家の建物に値段が付きにくい。私たちの実務では、建物に値段が付きにくい査定と、壊して建て替える人に売る前提の査定が重なって見えます(これは私たちの見立てです)。建て替える人の値段では建物はゼロではなくマイナス、家を残して住む人の値段では状態次第で値段が付く余地があります。売る前に、書類(建築確認済証・検査済証)を探し、査定では住む人に売る値段と建て替える人に売る値段を分けて出してもらってください。
  • 四つの回答=「所有権であれば借入期間の制限はありません」「35年はいける。築年数で切る基準は特にない」「申込人の年齢で見る。最長40年」「最長35年。減るとすれば申込人の年齢」。今回の一軒については、四つとも築年数だけによる期間の短縮を示さず、申込む人の年齢や属性が条件でした。
  • 公開の商品説明でも同じ趣旨=みずほ銀行の中古向け商品は築年数に関係なく最長35年、楽天銀行は中古でも新築と異なる制限はない、フラット35の借入期間の上限は年齢で決まる(原則「80歳-申込時年齢〔1年未満切上げ〕」と35年の短い方。築年数の条項はない)。
  • 「木造22年」は税の減価償却の年数。国の指針(平成26年)は「住宅の状態にかかわらず一律に築後20〜25年程度で市場価値がゼロとされる取扱いが一般的」と書き、改めるべきだとしている。
  • 実家には二つの値段がある。壊す前提=建物ゼロ+解体費のマイナス/残す前提=状態次第。査定書に「建物ゼロ」とあれば、どちらの前提かを聞く。

1. 同じ一軒を、銀行3行と住宅ローン会社1社に聞いた

私たちは、家を売る前に、次の買い手にローンが付くかを金融機関に確かめています。2026年9月、築25年・木造2階建て・所有権・都内・検査済証ありの一軒について、同じ文面を都内の買い手がよく使う金融機関に送りました。聞いたのは二つです。借入期間は何年まで組めるか、築年数で短くなるか。そして、物件価格の何割まで貸せるか。返事は、銀行3行と、住宅ローンの会社1社(フラット35も扱っています)から届きました。

  • 一つ目の銀行=「所有権であれば、借入期間の制限はありません」。
  • 二つ目の銀行=「35年はいける」「築年数で切る基準は、うちにはない」(築30年を超えても審査の土俵には乗る。ただし申込人の年齢による)。
  • 三つ目の銀行=「借入期間は申込人の年齢で見る」(満80歳完済・最長40年)。
  • 住宅ローンの会社=「最長35年。申込人の年齢で減る可能性がある」「物件100%+諸費用まで大丈夫」「新築と特段変わらないが、適合証明書(中古住宅)の発行が必須」。

四つとも、今回の家について、築年数だけで借入期間を短くする答えはありませんでした。違いは最長が35年か40年かで、期間の条件として挙がったのは借りる人の年齢です。物件価格の何割まで貸せるかも、四つとも「全額はあり得る」でした。ただし条件が付きます。決めるのは申込む人の年収や勤務先、いわゆる属性です。ある銀行の担当者は、勤務先によっては諸費用は出ず、100%を切る可能性もある、と言い添えています。

担保評価についても聞きました。同じ担当者は、中古だと担保評価はどうしても低くなる、と言い、それでもこの家なら全額は大丈夫だと思う、と続けました。銀行が担保として見る金額と、買う人に貸せる金額は同じではありません。今回の回答では、全額融資の可否について申込む人の年収や勤務先といった条件が挙げられましたが、実際の融資割合は物件の担保評価等も含めた審査で決まります。今回の条件では、担保評価が下がっても全額の見込み、という答えでした。もう一言、印象に残ったのは「新築と、あんまり変わらない」でした。

ここまでは私たちが実際に聞いた回答で、担当者が内部の運用を教えてくれたものなので社名は伏せます。公開されている商品説明でも、同じ趣旨は確かめられます。みずほ銀行の中古・リフォーム一体型は「中古住宅の築年数に関係なく最長35年」。楽天銀行のFAQは「中古物件であってもお借入期間等に新築住宅と異なる制限はありません」(同じFAQは、金融機関によっては建物の経過年数等で借入期間が短くなる場合がある、とも書いています)。フラット35の借入期間の上限は、原則として「80歳-申込時の年齢(1年未満切上げ)」と35年の短い方で、築年数の条項はありません(収入合算や親子リレー返済では年齢の扱いに例外があります)。国土交通省が金融機関に毎年聞いている調査(令和7年度)でも、審査項目の設問に回答した994機関のうち、最も多い項目は「完済時年齢」の98.4%で、築年数は独立した選択肢としては挙がっていません(担保評価は91.0%)。

借りられる。それでも、実家の建物はゼロと査定される。ここから先は、銀行ではなく査定の話になります。

2. 「22年でゼロ」は、どこから来たか

木造の家は22年で価値がゼロになる、とよく言われます。この22年は、国税庁の耐用年数表に載っている減価償却の年数です。住宅用の建物は木造22年、鉄筋コンクリート造47年など、構造ごとに決まっています。税金の計算で建物の値段を何年かけて減らしていくかを決める年数であって、家がその年数で住めなくなるという意味ではありません。22年を過ぎた木造の家に、人は普通に住んでいます。

ところが、この税の年数は市場で別の顔をしていました。国土交通省が平成26年3月に出した「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」は、「法人税法上の耐用年数(木造住宅は22年)などを参考にして、住宅の状態にかかわらず、一律に築後20〜25年程度で住宅の市場価値がゼロとされる取扱いが一般的である」と書き、その慣行を、住宅の状態に応じた評価に改めるべきだとしています。指針から12年。それでも私たちの実務では、築25年の実家の建物に値段が付きにくい。ローンは付く、国は改めよと言っている、それでも付かない。古いから安い、だけでは説明が足りません。

3. その査定は、誰が買う前提か

実家には、二つの値段があります。一つは、家を残して自分で住む人に売る値段。もう一つは、壊して建て替える人に売る値段です。建て替える人は建物にお金を払いません。それだけではなく、解体する費用を値段から引きます。いくら引かれるかは、建物の大きさ、道路の広さ、隣家との間隔で変わり、一律の金額では言えません。つまり建て替える人の値段では、建物はゼロではなくマイナスです。一方、住む人は、住める家にはお金を払います。いくら払うかは家の状態次第で、一律にゼロではありません。

そして、住む人がこの家を買うのに35年のローンは組める、というのが上の回答でした。国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査(三大都市圏)では、中古の戸建てを買った世帯の家は平均が築24.9年。築25年は、買われている家の平均に近い数字です。中古を選んだ理由で最も多いのは「予算的にみて手頃だったから」の71.0%で、買う人の多くは予算で選んでいます。

ここで、査定書の「建物ゼロ」に戻ります。確かめたいのは、築何年だからゼロか、だけではありません。その査定は、誰が買う前提で出た値段なのか、です。壊して建て替える人の値段なら、ゼロどころかマイナスで正しい計算です。家を残す前提なら、状態を見て値段が付く余地があります。同じ家に二つの値段があるのに、渡されるのは一枚です。私たちの実務では、建物に値段が付きにくい査定と、壊して建て替える人に売る前提の査定が重なって見えます。ここは私たちの見立てとしてお読みください。

建て替える人に売るのが悪いわけではありません。相続で兄弟姉妹が早く分けたい、遠方で管理に通えない。そういう事情なら、早く確実に現金にできる相手を選ぶのは正しい判断です。問題は、住む人に売れる家なのに、そうと知らないまま、壊す前提の値段だけを見て決めてしまうことです。土地の見方などほかの条件が同じなら、二つの値段の差は、解体費と建物の値段の分になります。

4. 家の側で効くのは、築年数より書類と基準

四つの回答がそう言っても、どの家でも同じとは言えません。今回の照会には条件がありました。検査済証があること。住宅ローンの会社は「適合証明書(中古住宅)の発行が必須」と付け加えています。フラット35を使う中古住宅は、原則として、住宅金融支援機構の技術基準(耐震性、接道、住宅の規模、土台や柱の腐朽・蟻害がないこと など)に適合しているかの物件検査を受け、適合証明書を取ります(一定の要件を満たす中古住宅には物件検査を省略できる制度があります)。適合証明の検査では、建築確認日を確かめる書類として、確認済証や検査済証のほか、建物の登記事項証明書や、地方公共団体が発行する台帳記載事項証明書も使えます。検査済証が手元に無くても、それだけで道が閉じるわけではありません。

築年数そのものより、その年代ゆえに付いてくる基準もあります。建築確認日が昭和56年5月31日以前、いわゆる旧耐震の家は、フラット35では機構の定める耐震評価基準などに適合することが要ります。買い手の住宅ローン控除も、既存住宅の要件が「昭和57年1月1日以後に建築されたもの」または耐震基準に適合することの証明があるものとされています(国税庁タックスアンサー No.1211-3)。今回の四つの回答は築25年の家への答えで、旧耐震の木造戸建についてはまだ聞いていません。ここは正直にそう書いておきます。

5. 売る前に、すること

一つ目。書類を探してください。建築確認済証と検査済証。無ければ、役所で台帳記載事項証明書を取れることがあります。無いなら無いと分かっているだけで、次に打つ手が決まります。

二つ目。査定を頼むときに、家を残して住む人に売る値段と、壊して建て替える人に売る値段を、分けて出してもらってください。分けて出せないなら、その査定が家を残す前提か壊す前提かを聞いてください。住む人に売るなら「建物をいくらで見たか」、建て替える人に売るなら「解体費をいくら見込んだか」。この二つの数字が、査定書を読む鍵になります。

三つ目。「この家に、次の買い手が35年のローンを組める銀行はありますか」と聞いてください。私たちは、聞いてから売ります。

建物の値段は誰に売るかで変わりますが、土地は残ります。ご自身の土地の相場の目安を知りたいときは、おうち健診をお使いください。住所を入れると、近所の実際の成約から出した坪単価の目安が出ます。建物の評価は、この目安には織り込まれていません。実家の売却でお困りなら、ご相談からお声がけください。登記と手元の書類の見方から、一緒に確かめます。

動画でも説明しています

この記事で取り上げた査定書と、都内の金融機関5か所に同じ一軒の条件で聞いた答えを、順に見ていく動画です。記事に書いていない部分(聞くときの言い方と、返ってきた答えの読み分け方)も入れています。10分あります。

売主側の仲介 株式会社ユーエスハウジング

よくあるご質問

木造の家は、築22年で本当に価値がゼロになりますか?

22年は、国税庁の耐用年数表にある減価償却の年数(木造の住宅用は22年)で、税金の計算に使う年数です。家がその年数で住めなくなるという意味ではありません。ただし国土交通省の指針(平成26年3月)は、この年数などを参考に「住宅の状態にかかわらず一律に築後20〜25年程度で住宅の市場価値がゼロとされる取扱いが一般的」だと書き、その慣行は改めるべきだとしています。私たちの実務では、建物に値段が付きにくい理由は税の年数そのものより、その査定が誰に売る前提で出た値段かにある、と見ています。

築25年の木造だと、住宅ローンの期間は短くなりますか?

私たちが2026年9月に、築25年・木造2階建て・所有権・都内(検査済証あり)の一軒について、都内の銀行3行と住宅ローン会社1社に同じ文面で聞いたところ、四つとも築年数だけで借入期間を短くする答えはありませんでした(「所有権であれば借入期間の制限はありません」「35年はいける。築年数で切る基準は特にない」「申込人の年齢で見る。最長40年」「最長35年。申込人の年齢で減る可能性」)。公開の商品説明でも、みずほ銀行の中古向け商品は築年数に関係なく最長35年、楽天銀行は中古でも新築と異なる制限はない、フラット35の借入期間の上限は年齢で決まります。ただし、これは今回の条件の家への答えで、金融機関によっては建物の経過年数等で期間が短くなる場合があります。金融機関・商品・時期で変わりますので、実際の借入では各社にご確認ください。

築年数が古いと担保評価が下がると聞きました。全額は借りられませんか?

ある銀行の担当者は、中古だと担保評価はどうしても低くなる、と言いました。それでも同じ担当者は、今回の築25年の家なら全額は大丈夫だと思う、とも言っています。銀行が担保として見る金額と、買う人に貸せる金額は同じではなく、今回の回答で全額融資の条件として挙がったのは申込む人の年収や勤務先といった属性でした。実際の融資割合は、物件の担保評価等も含めた審査で決まります。国土交通省の令和7年度の調査では、91.0%の金融機関が担保評価を審査項目にしています。家の条件と人の条件が変われば貸せる額も変わりますので、私たちは物件ごとに金融機関へ確かめてから売却の準備を進めます。

査定書に「建物ゼロ」と書かれました。もう建物に値段は付きませんか?

その査定が、誰が買う前提で出た値段かを確かめてください。壊して建て替える人に売る前提なら、建物にお金は払われず、解体費が値段から引かれるので、ゼロどころかマイナスで正しい計算です。家を残して住む人に売る前提なら、家の状態を見て値段が付く余地があります。査定を頼むときに、住む人に売る値段と建て替える人に売る値段を分けて出してもらい、分けて出せないなら、その査定が家を残す前提か壊す前提かを聞いてください。

出典・参考

この記事は一般的な説明です。金融機関の回答は、築25年・木造2階建て・所有権・都内・検査済証ありという一軒への回答で、家の条件と申込む人の条件が変われば答えも変わります。「組める」は「必ず組める」ではなく、借入期間と融資額は申込む人の年齢・属性と、金融機関ごとの審査で決まります。旧耐震(昭和56年5月31日以前に建築確認)の木造戸建については、今回の照会の対象外です。「住む人に売る値段と建て替える人に売る値段」「一律ゼロの多くは壊す前提の値段と重なる」は私たちの実務上の見立てです。個別のご判断は、登記・手元の書類・現地を確認してからになりますので、実際の売却にあたっては専門家にご相談ください。

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