誰も住まなくなった実家を相続して売却するとき、要件を満たす場合には、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。期限・要件・手続きの流れと、実務でつまずきやすいポイントを整理しました。
亡くなった方(被相続人)が一人で住んでいた家とその敷地を相続した人が、その家や敷地を一定の要件のもとで売ったとき、譲渡所得(売却による利益)から最大3,000万円を控除できる──これが通称「相続空き家の3,000万円特別控除」(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除。租税特別措置法35条3項)です。
不動産を売って利益が出ると、その利益(譲渡所得)に所得税・住民税がかかります。相続した実家は、親が何十年も前に取得していて取得費が分からないことが多く、その場合は売却額の5%を取得費とみなして計算するため、利益が大きく計算されがちです。そこにこの控除を適用できるかどうかで、税負担には大きな差が生じることがあります。
なお、2024年1月1日以後の譲渡では、対象となる家屋・敷地を取得した相続人が3人以上いる場合、控除額は1人あたり最大2,000万円とされています(2人以下の場合は1人あたり最大3,000万円)。
この特例の期限は二重になっています。2026年7月時点では、次の両方を満たす譲渡が対象です。
例えば2024年10月に相続が開始した場合、3年を経過する日の属する年は2027年なので、期限は2027年12月31日です。一方、2025年に相続が開始した場合、前者の期限だけなら2028年12月31日ですが、現行の制度適用期限が2027年12月31日のため、2026年7月時点では2027年中の譲渡までが対象になります(適用期限はこれまで延長を重ねてきた経緯がありますが、今後も延長されるかどうかは税制改正次第です)。
実家の売却には、相続登記・片付け・境界の確認・販売活動と、数か月単位の準備期間がかかるのが通常です。期限から逆算して、早めに動き始めることをおすすめします。
主な要件は次のとおりです(詳細は国税庁タックスアンサーNo.3306をご参照ください)。
| 家屋 | 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること/区分所有建物登記がされている建物(分譲マンション等)でないこと |
|---|---|
| 相続開始直前の状況 | 被相続人が一人で住んでいたこと。要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合も、一定の要件を満たせば対象になり得ます |
| 相続後の使い方 | 相続の時から売るときまで、居住・貸付け・事業のどれにも使っていないこと(空き家のままであること) |
| 売り方 | 譲渡価額が1億円以下であること(共有で売る場合や数回に分けて売る場合は合算して判定)/親子・夫婦など特別の関係がある人への譲渡でないこと |
このうち見落としやすいのが「相続後に使っていないこと」と「1億円以下の判定」です。後述の落とし穴であらためて触れます。
対象となるのは昭和56年5月31日以前、つまり旧耐震基準の時期に建てられた家屋のため、この特例には耐震面の要件が設けられています。売り方は大きく2通りです。
さらに、2024年1月1日以後の譲渡については、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊しを行った場合にも適用を受けられるようになりました。売主側で改修や解体を済ませなくても、現状のまま引き渡して買主側に対応してもらう形を選べるようになり、以前より使いやすくなった改正点です。この形を取る場合は、誰が・いつまでに改修や取壊しを行うかを売買契約で明確にし、「翌年2月15日」という期限の管理を買主任せにしないことが大切です。
相続税を納めた人が相続した財産を売る場合には、「取得費加算の特例」という別の制度もあります。相続税の申告期限の翌日から3年以内の譲渡を対象に、納めた相続税額の一部を取得費に加算して譲渡所得を圧縮できる制度です。
空き家の3,000万円特別控除とこの取得費加算の特例は、同じ譲渡について併用できず、どちらか一方の選択になります。どちらが有利かは、譲渡益の大きさや納めた相続税額などによって変わるため、売り出す前に税理士へ試算を依頼したうえで選ぶことをおすすめします。
手続きは大きく2段階です。
そのうえで、実務でつまずきやすいポイントを挙げます。
要介護認定等を受けて入所していたこと、入所後にその家を貸したり他の人の居住に使ったりしていないことなど、一定の要件を満たす場合は対象になり得ます。入所の時期や家の使われ方によって判定が分かれるため、個別には税理士や税務署にご確認ください。
2024年1月1日以後の譲渡では、対象となる家屋・敷地を取得した相続人が3人以上の場合、特別控除額は1人あたり最大2,000万円とされています(2人以下の場合は1人あたり最大3,000万円)。また、譲渡価額が1億円以下かどうかは、共有者全員の対価を合算して判定します。
区分所有建物登記がされている建物は対象外とされており、分譲マンションは通常これに当たるため、この特例の適用は受けられません。取得費加算の特例など他の制度を使える場合がありますので、税理士等にご確認ください。
確定申告は必要です。この特例は、被相続人居住用家屋等確認書などの書類を添付して確定申告をすることが適用の要件とされており、申告をしないと適用を受けられません。
※いずれも2026年7月7日閲覧。最新の内容は各機関のページでご確認ください。
特例を使えるかどうかは、建築年・住まい方・売り方によって変わります。株式会社ユーエスハウジングでは、相続した実家の現状と選択肢を整理する「おうち健診」を無料で行っています。税務の個別判断が必要な場合は、提携税理士へのお取次ぎも可能です。
おうち健診(無料・連絡先不要) ご相談本記事は2026年7月7日時点の法令等に基づく一般的な情報の提供を目的としており、個別の税務判断を行うものではありません。適用の可否や税額は個々のご事情により異なりますので、税理士等の専門家または税務署にご確認ください。株式会社ユーエスハウジングでは、提携税理士へのお取次ぎも承ります。