実家の売却、相続前と相続後どちらが得?
判断のポイント【2026年時点】
「親の家、売るなら生前か、それとも相続してからか」。ご家族の間でよく挙がる問いです。税金・手続き・ご家族の事情という3つの軸で、判断の分かれ目を平易に整理しました。
- 分かれ目は主に「相続税がかかる規模のご家庭か」「親が今もその家に住んでいるか」「どの控除・特例を使えるか」の3点です。
- この記事で分かれ目を整理したうえで、最終的には税理士との個別試算で確かめるのが近道です。
1. まず分かれ目は「相続税がかかる規模かどうか」
最初に確認したいのは、「そもそも、うちは相続税がかかる規模なのか」という点です。相続税には基礎控除があり、その金額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます(国税庁 No.4152)。遺産の総額(実家や預貯金などの合計)がこの範囲に収まれば、相続税は原則としてかかりません。
たとえば相続人が子ども2人なら、基礎控除は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」です。実家と預貯金を合わせてもこれを超えない見込みなら相続税の心配は小さく、売る時期は「譲渡所得税の特例をどちらが使いやすいか」「手続きの手間」「ご家族の事情」で比べることになります。
一方、基礎控除を超えそうなご家庭では、財産を「不動産のまま」持つか「現金」で持つかで相続税の評価が変わるため、売るタイミングの影響が大きくなります。
2. 相続前(生前)に売る場合のポイント
親が元気なうちに実家を売る、いわゆる生前売却です。プラスに働きやすいのは次のような点です。
- 居住用の特例を使える場合がある:親がその家に住んでいる状態(住まなくなってから一定期間内を含む)でご本人が売る場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「居住用財産の3,000万円特別控除」(国税庁 No.3302)の適用を受けられる場合があります。所有期間が10年を超えていれば、税率が軽くなる特例(国税庁 No.3305)を併せて使える場合もあります。
- 現金化しておくと分けやすい:不動産は物理的に分けられませんが、現金にしておけば将来の遺産分けがシンプルになりやすく、老人ホームの入居費用や介護資金に充てることもできます。
- 本人の意思で進められる:売る・売らない、いくらで売るかを、親ご本人の意思で決められます。
一方で注意したいのが、相続税への影響です。不動産は相続税の計算上、路線価などをもとに評価され、市場価格より低くなる傾向があります。要件を満たせば「小規模宅地等の特例」で評価がさらに下がる場合もあります。これに対して現金は額面どおりに評価されるため、相続税がかかる規模のご家庭では、生前の現金化が税負担を増やす方向に働くことがあります。
また、親の判断能力が低下すると、生前売却そのものが難しくなります(後述のFAQ参照)。生前に売る選択肢を残すなら、早めの話し合いが大切です。
3. 相続後に売る場合のポイント
相続が発生してから、相続人が実家を売るパターンです。プラスに働きやすいのは次の点です。
- 小規模宅地等の特例:配偶者や同居していた親族が自宅の土地を相続するなど一定の要件を満たすと、330㎡までの部分について土地の相続税評価額を最大80%減額できる特例です(国税庁 No.4124)。相続税がかかる規模のご家庭では影響の大きい制度です。
- 空き家の3,000万円特別控除:亡くなった親がひとりで住んでいた昭和56年5月31日以前建築の家屋を相続して売る場合など、細かな要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円(相続人の数などにより2,000万円となる場合があります)を控除できる制度です。生前に使う居住用の3,000万円控除(No.3302)とは別の制度で、要件も異なります。
- 取得費加算の特例:相続税を納めた場合、通常は相続開始から3年10か月以内(相続税の申告期限の翌日から3年以内)の売却であれば、納めた相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得税を抑えられる場合があります(同じ物件について空き家の3,000万円控除との併用はできません)。
注意点は、時間と意思決定です。相続後に売るには、遺言が無く相続人が複数なら遺産分割協議(誰が相続するかの話し合い)を、そして相続登記(名義変更)を済ませる必要があり、売り出しまで時間がかかりやすくなります。また、実家を兄弟姉妹の共有名義にすると、売却に共有者全員の同意が要るため、意思決定が難しくなることがあります。空き家のまま置く期間の管理や固定資産税の負担も見込んでおきたいところです。
4. ひと目で比較:相続前と相続後
| 観点 | 相続前(生前)に売る | 相続後に売る |
|---|---|---|
| 主な特例 | 居住用財産の3,000万円特別控除(No.3302)、10年超所有の軽減税率(No.3305)を使える場合がある | 小規模宅地等の特例(最大80%減)、空き家の3,000万円特別控除、取得費加算を使える場合がある |
| 相続税への影響 | 現金は額面どおり評価されるため、負担が増える方向に働くことがある | 不動産のまま相続すると評価を抑えられる場合がある |
| 手続き・期間 | 親本人の意思で進められる(判断能力があるうちに限られる) | (遺言が無ければ)遺産分割協議と相続登記が必要で、時間がかかりやすい |
| 分けやすさ | 現金になるため分けやすい | 共有名義になると意思決定が難しくなることがある |
| 向きやすい例 | 相続税がかからない規模で、老後資金に充てたい場合 など | 相続税がかかる規模で、小規模宅地等の特例の要件を満たす場合 など |
※一般的な傾向の整理です。実際にどちらが有利かは、財産の内訳・ご家族構成・各特例の要件を満たすかどうかで変わります。
生前か相続後かは、金額の見込みが分からないと決められません。まず住所だけで、いまどのくらいの水準かをご確認ください。
いまの相場の目安を見る(無料)5. 判断の手順|わが家の場合を整理するには
迷ったときは、次の順番で整理すると考えやすくなります。
- 相続人の数を数え、基礎控除と財産の概算を比べる:「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と、実家の相続税評価額(路線価などによる評価で、売却相場より低くなることが多い)の概算+預貯金などの合計を見比べ、相続税がかかる規模かどうかの見当を付けます。
- 親の居住状況と家の条件を確認する:親が今も住んでいるか、空き家か。建築年(昭和56年5月31日以前かどうか)や所有期間(10年超かどうか)で、使える可能性のある特例が変わります。
- 家族で方針を話し、税理士に個別試算を依頼する:特例はいずれも要件が細かく、適用の可否で結果が大きく変わります。最終判断の前に、税理士による個別の試算で確かめるのが近道です。
ユーエスハウジングは、相続や空き家のご売却を媒介(仲介)でお手伝いする品川区西品川の不動産会社です。税の個別判断は提携税理士へお取次ぎし、相場の把握や売却の段取りは当社が一緒に整理します。
よくあるご質問
Q. 相続税がかからない規模なら、いつ売っても同じですか?
A. 相続税の心配が小さいご家庭では、比較の中心は譲渡所得税の特例と手間になります。親が住んでいるうちに売るなら居住用の3,000万円特別控除、相続後に売るなら空き家の3,000万円特別控除と、それぞれに道がありますが、要件はまったく別です。どちらの要件に当てはまりそうかで結論が変わるため、売り出す前の確認をおすすめします。
Q. 居住用の3,000万円控除と「空き家の3,000万円控除」は同じものですか?
A. 別の制度です。居住用財産の特例(国税庁 No.3302)はご本人がマイホームを売ったときのもので、主に生前の売却で検討します。空き家の特例は、相続した家(亡くなった方がひとりで住んでいた昭和56年5月31日以前建築の家屋など)を相続人が売ったときのもので、相続後に検討します。控除額が同じ「最高3,000万円」のため混同されがちですが、要件も使う場面も異なります。
Q. 親が認知症になった場合でも、実家は売れますか?
A. 判断能力が十分でなくなると、ご本人名義の不動産をご家族の判断だけで売ることは原則としてできません。成年後見制度を利用する方法はありますが、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要で、時間もかかります。生前売却を選択肢に残したい場合は、親が元気なうちに家族で方針を話し合っておくことが大切です。
Q. まず何から始めればよいですか?
A. 「法定相続人の数」と「財産の概算」から相続税がかかる規模かどうかの見当を付け、実家の相場観をつかむことから始めるのがおすすめです。当社の「おうち健診」なら、住所から無料で周辺相場の目安を確認できます(連絡先の入力は不要です)。
出典・参考
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例
- 国税庁 タックスアンサー No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 国税庁 タックスアンサー No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 タックスアンサー No.4152 相続税の計算
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
宅地建物取引士が執筆し、株式会社ユーエスハウジングが監修しています。祖父が西品川で開いた質屋「越後屋」から三代、この街で商売を続けてきました。品川区西品川の事務所を中心に、大崎・戸越・大井・荏原など歩いて行ける範囲を大事にしながら、相続・空き家のご売却を媒介(仲介)でお手伝いしています。当社は買い取る会社ではなく、売る側に立つ仲介の会社です。
「おうち健診」は、住所を入れるだけで周辺相場の目安を確認できる無料サービスです(連絡先の入力は不要)。売る・売らないが決まっていなくてもお使いいただけます。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の取引や税務上の判断を勧めるものではありません。税額や特例の適用可否は個別のご事情により異なりますので、実際のご判断にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。株式会社ユーエスハウジングでは、提携税理士へのお取次ぎも承っています。