GUIDE|売却の基礎知識

空き家のまま持ち続けると年いくらかかるのか

「すぐには売らない。しばらく置いておく」という判断は、しばしば正しい判断です。ただ、その「しばらく」に毎年いくらかかっているかは、意外と把握されていません。売る・貸す・持ち続けるを比べるための、費用の側の材料を整理しました。

2026年7月31日時点の情報です。税制・法令は改正されることがあります。

結論:目に見えている固定資産税だけでなく、火災保険・見回り・庭木・傷みの進行を足すと、年間の負担は思ったより大きくなります。
  • 2023年12月の法改正で、放置すれば特定空家になるおそれがある家は「管理不全空家等」として勧告の対象になりました。
  • 勧告を受けると土地の固定資産税の住宅用地特例が外れ、土地の税負担が一段と重くなります。
  • 持ち続けること自体が悪いのではなく、いくらかかっているかを知らずに続けるのが危ない、という話です。

1. 毎年、確実に出ていくもの

誰も住んでいなくても、これらは止まりません。

  • 固定資産税・都市計画税:1月1日時点の所有者に課されます。東京23区では都が課税し、税率は固定資産税1.4%(標準税率)、都市計画税0.3%(23区の税率で、法律上の上限)です。
  • 火災保険・地震保険:空き家は保険会社によって扱いが変わり、住宅物件ではなく一般物件として扱われて保険料が上がったり、そもそも引き受けを断られたりすることがあります。かといって無保険で置くと、火災や台風で近隣に被害を出したときに背負うものが大きくなります。
  • 電気・水道の基本料金:換気や掃除のために止めずに残すことが多く、その分は毎月かかります。
  • 見回り・管理:ご自身で通うなら交通費と時間。管理会社に頼むと、月1回の巡回で数千円台からというのが一般的な水準です。
  • 庭木・雑草:都心の住宅地では、伸びた枝が隣地や道路に出ると苦情の原因になります。年1〜2回の手入れでも数万円単位です。

2. 固定資産税は「住宅用地特例」で安くなっている

意外と知られていませんが、家が建っている土地の固定資産税は、大きく割り引かれた状態で課税されています。これが「住宅用地の特例」です。

区分固定資産税の課税標準都市計画税の課税標準
小規模住宅用地(200㎡以下の部分)評価額の6分の1評価額の3分の1
一般住宅用地(200㎡超の部分)評価額の3分の1評価額の3分の2

東京23区では、これに加えて小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡まで)の都市計画税を条例で2分の1に軽減する独自の措置があります。都心の実家の敷地は200㎡以下に収まることが多いので、多くの場合は6分の1で計算されています。「思ったより固定資産税が安いな」と感じているとしたら、この特例が効いているからです。

裏を返すと、この特例が外れたときの反動が大きいということでもあります。

3. 勧告を受けると、その特例が外れる

2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法で、「管理不全空家等」という区分が新設されました。すでに危険な状態の「特定空家等」になる前の段階、つまり放置すればそうなるおそれがある家を、市区町村が指導・勧告できるようになったものです。

流れはこうです。まず市区町村から指導があり、改善が見られなければ勧告に進みます。そして勧告を受けた時点で、その土地は住宅用地特例の対象から外れます。6分の1で計算されていた課税標準が、そのまま元の評価額に戻ります。税額そのものが単純に6倍になるわけではありませんが(負担調整の仕組みがあります)、負担が大きく増えることは間違いありません。

さらに危険な状態と判断されて「特定空家等」になり、命令にも従わない場合は50万円以下の過料、最終的には行政代執行による取り壊しとその費用の請求という段階まであります。

ここで大事なのは、これは「ボロボロに崩れた家」だけの話ではないということです。窓が割れたまま、屋根材が落ちそう、雑草が繁茂して隣地に及んでいる、ゴミが放置されている。都心の住宅密集地では、近隣からの相談が入りやすく、区の側も動きやすい環境にあります。年に数回でも見回っていれば防げる話です。

持ち続ける費用と、売った場合の手取り。並べて比べるには、まずいまの相場の目安が要ります。

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4. 目に見えないコスト

領収書は出ませんが、確実に減っているものがあります。

  • 建物の傷み:人が住まなくなった家は傷みが早い、というのは実際そのとおりです。換気されないことで湿気がこもり、水を流さないことで排水管が乾いて臭いが上がってくる。雨漏りに気づくのが遅れると、下地まで持っていかれます。
  • 建物の値段が消えていく:木造住宅は、ある時期を過ぎると建物としての値段がほぼ付かなくなり、むしろ解体費の分だけ土地の値段から引かれる立場になります。「もう少し待てば」と置いた数年で、その線を越えることがあります。
  • 相続人が増える:置いている間にきょうだいの誰かが亡くなれば、その持分は次の世代へ渡ります。合意すべき人数が増えると、売却の難易度は跳ね上がります。きょうだいで相続した実家の記事でも触れています。
  • 近隣との関係:伸びた枝、落ち葉、猫、不審者。ご近所の方が我慢してくださっているうちに手を打つのと、苦情になってから動くのとでは、後の話の進めやすさが変わります。

5. 数字で比べてみる

仮の数字で並べてみます。仕組みをご説明するための例であり、実際の金額をお約束するものではありません。

前提:品川区の木造戸建て、土地約30坪(約100㎡)。

  • 固定資産税・都市計画税:住宅用地特例が効いている状態で、年10万円台というのが一つの目安です(評価額により大きく変わります)
  • 火災保険:年2〜4万円程度(空き家扱いになるとこれより上がることがあります)
  • 電気・水道の基本料金:年2万円程度
  • 見回り・管理委託:月5,000円なら年6万円
  • 庭木・雑草の手入れ:年3〜5万円

合わせると、おおよそ年20〜30万円台という水準になります。10年置けば200万〜300万円台。これに建物の値落ちが加わります。

一方で、売って現金化すれば、この支出は止まります。もし勧告を受けて住宅用地特例が外れた場合は、この土台がさらに上がります。

ご自宅の実際の数字は、毎年6月ごろに届く固定資産税の納税通知書(23区の場合)を見れば分かります。課税明細書に土地と建物の評価額、課税標準額が載っています。まずそこを見るところからで十分です。

6. 持ち続けるほうがよい場合もある

費用の話ばかりしましたが、持ち続けるのが正しい場面もあります。

  • 近い将来、ご自身やお子さんが住む予定がある
  • 再開発や道路計画など、周辺の状況が数年で変わる見込みがある
  • 相続税の申告期限が近く、先に整理すべき手続きが残っている
  • ご家族の気持ちの整理がまだついていない

最後の項目は、費用対効果では測れないものです。当社が「売ると決めてから来なくて大丈夫です」と申し上げているのは、そこを急かしたくないからです。

ただし、いくらかかっているかは知っておいてください。知ったうえで「それでも持つ」と決めるのと、知らずに10年経つのとでは、まったく違う話です。

よくあるご質問

Q. 家を取り壊して更地にすると、固定資産税は上がりますか?

A. 上がる可能性があります。住宅用地の特例は「住宅が建っている土地」に適用されるため、取り壊して更地にすると特例の対象から外れます。一方で、更地のほうが買い手を探しやすい場合もあり、解体費と税負担、売りやすさを並べて判断することになります。年内に売却の見込みが立っているかどうかでも変わるので、解体の前にご相談ください。

Q. 誰も住んでいなくても、火災保険は必要ですか?

A. 必要性はむしろ高いと考えたほうがよいと思います。人がいない家は火災の発見が遅れ、密集地では近隣に被害が及びます。ただし空き家は保険会社によって扱いが変わり、住宅物件ではなく一般物件として扱われて保険料が上がったり、引き受けを断られたりすることがあります。契約中の保険がある場合は、空き家になったことを保険会社に伝えておかないと、いざというときに支払われない事態もあり得ます。

Q. 「管理不全空家」に指定されると、すぐ税金が上がるのですか?

A. 指導の段階では特例は外れません。指導しても改善が見られず「勧告」に進んだ場合に、住宅用地特例の対象から外れます。逆に言えば、指導の連絡が来た段階で手を打てば止められます。区からの通知は放置しないでください。

Q. 賃貸に出すという選択肢はどうですか?

A. 収入が入り、人が住むことで傷みも進みにくくなる利点があります。一方で、貸すために先に修繕が必要になること、いったん人が住むと自分の都合では明け渡してもらえないこと、将来売るときに入居者がいる状態だと買い手が限られることは、事前に見ておいたほうがよい点です。売却と賃貸のどちらが合うかは物件と目的次第なので、両方の見立てを並べてご相談ください。

出典・参考

この記事について

宅地建物取引士が執筆し、株式会社ユーエスハウジングが監修しています。祖父が西品川で開いた質屋「越後屋」から三代、この街で商売を続けてきました。品川区西品川の事務所を中心に、大崎・戸越・大井・荏原など歩いて行ける範囲を大事にしながら、相続・空き家のご売却を媒介(仲介)でお手伝いしています。当社は買い取る会社ではなく、売る側に立つ仲介の会社です。

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※本記事は2026年7月31日時点の一般的な情報のご提供を目的としたものです。記事中の金額は費用の内訳をご説明するための目安であり、実際の税額・保険料・管理費は物件の評価額、面積、状態、契約内容により異なります。固定資産税の課税や空家法の運用は自治体により取り扱いが異なる場合がありますので、個別の点は所轄の窓口または税理士等の専門家にご確認ください。

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