相続した実家は、きょうだいの誰か一人の判断では売れません。全員の合意が要ります。そして、決まらないまま共有で置いておくと、時間が経つほど話は難しくなります。どういう分け方があり、どの順番で進めればもめにくいのかを、実務の側から整理しました。
いきなり「売る/売らない」から入ると、たいていまとまりません。判断の材料が人によって違うからです。長男は「あの家は3,000万にはなるはずだ」と思い、次女は「古いから二束三文だろう」と思っている。この状態で結論だけ議論しても、平行線になります。
先に片付けたほうがよいのは、次の2つです。
当社が「ご兄弟に、同じ紙を渡します」と申し上げているのはこの理由です。一人が聞いた話を口頭で伝え直すと、悪気がなくても必ず食い違います。
相続した不動産の分け方には、大きく3つあります。
| 分け方 | 中身 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 換価分割 | 売って、代金を持分に応じて分ける | 誰も住まない・全員が現金で受け取りたい |
| 代償分割 | 一人が家を引き継ぎ、他のきょうだいに相当額の現金を渡す | 誰かが住み続けたい・引き継ぐ人に資金がある |
| 現物分割 | 土地を分筆するなど、財産そのものを分ける | 土地が広く、分けても使える形になる |
都心の実家では、現物分割は現実的でないことが多いです。分けた結果それぞれが接道の条件を満たさなくなったり、狭すぎて使えなくなったりします。品川区のように敷地がそれほど広くない地域では、実際には換価分割か代償分割のどちらかになりがちです。
そして4つ目の「共有のまま持つ」。これは分け方というより、決めていない状態です。
共有そのものが違法なわけではありませんし、当面は誰も困りません。困るのは数年後です。
「いま決めたくない」というお気持ちは自然なものです。ただ、決めないという選択には時間とともに増える代償があります。そこだけは、きょうだいで共有しておいたほうがよいと思います。
話し合いの前に、ご兄弟が同じ資料を見ておくと争点が減ります。おうち健診の所見書は、参考相場と整理すべき論点が1枚にまとまります。連絡先の入力欄がないので、配っても営業の電話はかかりません。
家族会議用の1枚をつくる(無料)売って現金で分けると決めた場合、実務は次のように進みます。
実務上つまずきやすいのは、印鑑証明書と実印です。人数分そろえる必要があり、遠方のきょうだいがいると日数がかかります。契約の日程が見えた段階で、早めに手配をお願いしておくと当日慌てません。
話し合いでまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停という道があります。調停委員が間に入り、当事者だけでは進まない話を整理していく手続きです。それでもまとまらなければ審判に移ります。
すでに共有登記が済んでいて、その後に「持分を解消したい」という段階になった場合は、共有物分割請求という別の手続きになります。2023年4月からは、所在が分からない共有者がいる場合に裁判所の関与でその持分を取得・譲渡できる制度も設けられました。
ここから先は法律の領域です。当社は媒介(仲介)の立場なので、争いのある場面には踏み込みません。話がこじれてきたと感じたら、弁護士へお取次ぎします。もめてから不動産会社に相談するより、もめる前に材料をそろえておくほうが、結果的に費用も時間も少なくて済みます。
共有で売った場合、譲渡所得はそれぞれの持分に応じて各自のものになります。まとめて誰かが申告するのではなく、相続人がそれぞれ自分で確定申告します。
要件を満たせば、相続した空き家の3,000万円特別控除も相続人ごとに使えます。ただし相続人が3人以上の場合は、1人あたりの控除額が2,000万円になります。税金の記事と控除の記事もあわせてご覧ください。
代償分割の場合、代償金を受け取った側に譲渡所得は発生しませんが、家を引き継いだ側が将来売るときの取得費の考え方に関わってきます。どの形が有利かは金額と人数で変わるので、分け方を決める前に税理士に一度当ててみることをおすすめします。決めてしまった後では選び直せません。
A. 決められません。不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要で、持分の多い少ないにかかわらず一人でも反対すれば売れません。まずは反対の理由を聞いてみてください。金額への不安なのか、実家がなくなること自体への抵抗なのかで、打つ手が変わります。相場の資料を全員で共有するだけで前に進むこともあります。
A. 委任状で代理の方に出席してもらう方法があります。ただし実印と印鑑証明書は本人のものが必要で、書類のやり取りに日数がかかります。日程が見えた段階で早めに手配をお願いしておくと当日慌てません。
A. 手続きは軽くなりますが、遺産分割協議書に「換価分割のために便宜上この名義にした」という趣旨を明記していないと、代表者から他の相続人への贈与とみなされる余地があります。書き方が肝心なところなので、必ず司法書士・税理士に確認してから登記してください。
A. 現在の相続人全員を戸籍で確定し、遺産分割協議をまとめたうえで相続登記をすれば売却できます。相続が二重三重に重なっていると相続人が増えている分、戸籍集めと合意形成に時間がかかります。放置するほど人数が増えるので、着手は早いほうが楽です。
宅地建物取引士(不動産の実務17年)が執筆し、株式会社ユーエスハウジングが監修しています。祖父が西品川で開いた質屋「越後屋」から三代、この街で商売を続けてきました。品川区西品川の事務所を中心に、大崎・戸越・大井・荏原など歩いて行ける範囲を大事にしながら、相続・空き家のご売却を媒介(仲介)でお手伝いしています。当社は買取業者ではないので、安く仕入れて利ざやを取ることはありません。
おうち健診の所見書は、参考相場と、売り出す前に整理しておきたい論点が1枚にまとまります。連絡先の入力欄がないので、ご家族に配っていただいても営業の電話がかかることはありません。
この件を相談する(無料) おうち健診(連絡先不要)※本記事は2026年7月31日時点の一般的な情報のご提供を目的としたものです。遺産分割の進め方、登記の方法、税務上の取り扱いは個別の事情により異なり、本記事の内容が成約や特定の結論を保証するものではありません。具体的なご判断にあたっては、弁護士・司法書士・税理士等の専門家にご確認ください。