GUIDE|売却の基礎知識

媒介契約の選び方と「囲い込み」の見分け方

不動産会社に売却を頼むときに結ぶのが媒介契約です。3種類あって、どれを選ぶかで売り出し方が変わります。あわせて、売主にとって見えにくい「囲い込み」という問題があります。これは仕組みを知っていれば、売主ご自身の手で確かめられます。その方法までご説明します。

2026年7月31日時点の情報です。税制・法令は改正されることがあります。

結論:媒介契約は3種類。1社に任せる専任・専属専任には、レインズ(指定流通機構)への登録義務と定期報告の義務があり、売主にとっての情報の透明度はむしろ高くなります。
  • 囲い込みが心配な場合は、レインズの「登録証明書」に載っているIDとパスワードで売主専用の確認画面にログインし、取引状況が「公開中」になっているかをご自身で確かめてください。
  • 2025年1月からは、囲い込みが確認された場合に宅地建物取引業法にもとづく指示処分の対象になることが明確化されています。

1. 媒介契約は3種類

売却を不動産会社に依頼するときに結ぶ契約で、宅地建物取引業法にもとづいて次の3つが定められています。

  • 一般媒介契約:複数の会社に同時に依頼できます。売主がご自分で買主を見つけて直接取引すること(自己発見取引)もできます。
  • 専任媒介契約:1社だけに依頼します。ただし自己発見取引は可能です。
  • 専属専任媒介契約:1社だけに依頼し、自己発見取引もできません。ご自分で買主を見つけた場合も、依頼した会社を通すことになります。

「1社に絞ると囲い込まれそうで怖い」と考えて一般媒介を選ぶ方がいますが、実はここには逆の面もあります。

2. 表で見る違い

一般媒介専任媒介専属専任媒介
複数社への依頼できるできないできない
自己発見取引できるできるできない
レインズへの登録義務なし契約から7日以内(休業日を除く)契約から5日以内(休業日を除く)
売主への業務報告義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上
契約期間の上限法律上の定めなし(国土交通省の標準媒介契約約款では3か月以内)3か月3か月

ここで注目していただきたいのが、レインズ登録と報告の欄です。一般媒介にはレインズへの登録義務も、定期的な業務報告の義務もありません。(購入の申込みが入ったときの報告は、どの媒介契約でも義務です)複数社に頼んでいるから安心、と思っていても、どの会社もレインズに載せていなければ、その物件は業界内のどこにも出ていないということが起こり得ます。定期的な報告の義務もないので、いま何が起きているのかを知る手立てが乏しくなります。

逆に専任・専属専任は、レインズに載せる義務と定期的に報告する義務がセットで付いてきます。1社に絞るぶん、その1社に対して法律が課している縛りは強くなる、という構図です。

3. 「囲い込み」とは何か

不動産会社の報酬は、媒介した相手方から受け取る仲介手数料です。売主から依頼を受けた会社が、買主も自社で見つけると、売主・買主の双方から手数料を受け取れます。これがいわゆる「両手仲介」です。

それ自体が違法なわけではありません。問題は、両手にするために他社からの問い合わせを断ることです。他社から「その物件を紹介したい」と連絡が来たときに、「すでに商談が入っています」「契約予定です」と事実と違う説明をして断る。これが囲い込みです。

売主にとって何が損かというと、買い手の候補が減ることです。10社から声がかかるはずだった物件が、1社の自社客だけを相手にすることになる。競争が起きないので、価格が伸びにくくなります。そして期間も延びます。

厄介なのは、売主からは見えないことです。断られているのは他社であって、売主のところには何も届きません。「なかなか問い合わせが来ませんね」と言われれば、そういうものかと思ってしまいます。

4. 2025年1月から、規制が入りました

2024年6月に宅地建物取引業法施行規則が改正され、あわせて「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」も改正されて、2025年1月1日から次の点が明確になりました。

  • 囲い込みが確認された場合、宅地建物取引業法65条にもとづく指示処分の対象になること
  • 宅建業者は、レインズに登録した物件の取引状況(公開中・書面による購入申込みあり・売主都合による一時紹介停止中)を正確に登録・更新すること
  • 登録証明書を売主に交付する際に、売主自身が取引状況を確認する方法を説明すること

つまり、いまは「売主が自分で見に行ける」ことが制度として整えられている状態です。使わない手はありません。

5. 売主が自分で確かめる方法

手順はこれだけです。

  1. 登録証明書を受け取る。専任・専属専任で媒介契約を結ぶと、不動産会社がレインズに登録します。登録すると発行されるのが「登録証明書」です。これは売主に交付されるものなので、もらっていなければ「レインズの登録証明書をください」とお伝えください。
  2. 書面に載っている確認用IDと確認用パスワードを見る。売主専用の確認画面にログインするためのものです。
  3. レインズの売主専用ログイン画面にアクセスして入力する。登録されている物件情報、図面、そして取引状況が表示されます。
  4. 取引状況が「公開中」になっているかを見る。ここが「一時紹介停止中」になっているのに、売主が何も申し出ていないとしたら、その理由を尋ねてください。

登録内容そのものも確認する価値があります。写真が1枚しか載っていない、間取り図がない、コメントが空欄。他社の担当者はこの画面を見て「お客様に紹介するかどうか」を決めます。載っている情報が薄ければ、それだけで紹介の順番が下がります。

売主が見ていると分かっているだけで、いい加減な運用は起きにくくなります。疑うためというより、当たり前のことが当たり前に行われていることを確かめるために、一度ログインしてみてください。

いまお預けになっている物件について「登録証明書をもらっていない」「取引状況が確認できない」という段階のご相談も承ります。他社と比べたうえでお決めください。

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6. どれを選ぶか

一概にこれが正解、とは言えません。ただ、考え方の目安はあります。

  • すぐ売れそうな物件・条件のよい物件なら、一般媒介で複数社に競わせる方法にも意味があります。放っておいても各社が動くからです。
  • 相続した実家、古家、権利関係の整理が必要な物件は、専任か専属専任のほうが進みやすいのが実情です。役所調査、境界の確認、残置物、名義の整理といった手間のかかる作業は、契約が取れるかどうか分からない状態では誰も本腰を入れません。1社に決めて、その会社に責任を持たせるほうが動きます。
  • いずれの場合も、3か月ごとに更新するかどうかを判断できるということは覚えておいてください。専任も専属専任も契約期間の上限は3か月です。動きが悪ければ、更新せずに別の会社に切り替えられます。「1社に縛られる」というほどの縛りではありません。

当社は媒介(仲介)だけで、買取をしません。自社で買い受けることがないので、売主側と買主側で利益がぶつかる場面が構造的に少なくなります。専任・専属専任でお預かりした場合は、レインズの登録証明書をお渡しし、法定の業務報告もお出しします。士業の先生へのページにも同じことを書いていますが、これは「囲い込みません」と言葉で言う代わりに、確かめられる形にしておくという意味です。

よくあるご質問

Q. 登録証明書をもらっていません。請求してもよいのですか?

A. 問題ありません。レインズに登録したときに発行され、売主に交付されるものです。「レインズの登録証明書をください」とお伝えください。2025年1月からは、交付の際に売主が取引状況を確認する方法を説明することが望ましいとされています。

Q. 取引状況が「一時紹介停止中」になっていました。これは囲い込みですか?

A. 必ずしもそうとは限りません。売主のご都合で一時的に紹介を止めている場合や、書面による購入申込みが入っている場合にも使われる区分です。ご自身が申し出た覚えがないのにこの表示になっているなら、その理由を担当者に確認してください。説明が曖昧なら、そこは踏み込んで聞いてよいところです。

Q. 一般媒介で複数社に頼んだほうが、たくさんの人に見てもらえるのでは?

A. 会社の数と、買い手に届く量は別の話です。レインズに登録されていれば、その情報は他の宅建業者が見られる状態になります。逆に一般媒介はレインズへの登録が義務ではないため、どの会社も登録しないまま各社の自社サイトに載せているだけ、という状態も起こり得ます。何社に頼んだかより、レインズに載っているかどうかで見てください。

Q. 専任で頼んだ会社の動きが悪い場合、途中でやめられますか?

A. 契約期間の上限は3か月なので、更新しないという判断ができます。期間の途中での解除は契約内容によりますが、更新の時期が来たら続けるかどうかを必ず考える、という程度で十分に歯止めになります。契約書に自動更新の定めがないかも確認しておいてください。

出典・参考

この記事について

宅地建物取引士が執筆し、株式会社ユーエスハウジングが監修しています。祖父が西品川で開いた質屋「越後屋」から三代、この街で商売を続けてきました。品川区西品川の事務所を中心に、大崎・戸越・大井・荏原など歩いて行ける範囲を大事にしながら、相続・空き家のご売却を媒介(仲介)でお手伝いしています。当社は買い取る会社ではなく、売る側に立つ仲介の会社です。

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媒介契約を結ぶ前に、比べてください

どの契約が合うかは、物件の状態と急ぎ具合で変わります。まずおうち健診でいまの状態を見たうえで、進め方をご一緒に整理します。他社と比べたうえでお決めください。

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※本記事は2026年7月31日時点の一般的な情報のご提供を目的としたものです。媒介契約の内容、レインズの運用、確認画面の仕様は改定されることがあります。取引状況の表示が実態と異なると感じられた場合の対応は個別の事情によりますので、必要に応じて宅地建物取引業の免許行政庁や関係団体の相談窓口にもご確認ください。

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