遠方から品川の実家を売る
ご実家が品川で、ご自身は関西や九州、あるいは海外、というご相談は少なくありません。「何度も足を運べないから、売却は無理だろう」と思っておられる方が多いのですが、実際に来ていただく必要がある場面は限られています。何がオンラインと郵送で済み、何がそうでないかを分けて整理します。
- 宅地建物取引業法の書面は2022年5月から電子交付が認められており、重要事項説明もオンライン(IT重説)で行えます。
- 実際に足を運んでいただく必要が出やすいのは決済の場面です(司法書士による本人確認があるため)。それも司法書士の出張やご自宅近くでの面談など、やりようがあります。
- 動かないまま置くより、できるところから進めるほうが早く片付きます。
1. 実際、何回来ることになるか
物件と進め方によりますが、目安としては次のように分かれます。
| 場面 | 来ていただく必要 | 代わりの方法 |
|---|---|---|
| 査定・売り方の相談 | 不要 | 電話・メール・オンライン通話 |
| 現地の確認 | 不要 | 当社が伺い、写真と所見をお送りします |
| 媒介契約 | 不要 | 郵送または電磁的方法(ご承諾があれば) |
| 室内の片付け・残置物 | できれば一度 | 業者手配のみなら立ち会いなしでも可 |
| 買主の内見 | 不要 | 鍵をお預かりして当社が立ち会います |
| 重要事項説明・売買契約 | 不要なことが多い | IT重説+持ち回り契約 |
| 決済・引き渡し | 原則として必要 | 司法書士の出張、または代理人 |
つまり、うまく段取りを組めば、実際に来ていただくのは決済の1回、片付けを含めても1〜2回に収まることが多いということです。
2. 来なくても進むこと
媒介契約・重要事項説明・売買契約の電子化
2022年5月18日施行の改正宅地建物取引業法により、媒介契約書(34条の2)、重要事項説明書(35条)、契約書面(37条)は、相手方のご承諾があれば電磁的方法で交付できるようになりました。紙に押印して郵送で往復する、という手順を踏まなくてよくなったということです。
重要事項説明も、オンラインで行うことが認められています(IT重説)。宅地建物取引士が画面越しに宅建士証を提示して説明し、書類は事前にお送りしておく、という形です。
持ち回り契約
売主と買主が同じ場に集まらず、契約書を郵送で順に回して署名押印する方法です。遠方の売主の場合、実務では珍しくありません。
片付け・解体・測量の手配
業者の手配、見積もりの取得、作業の立ち会いは、当社で対応できます。ご判断だけお願いして、あとはこちらで進める形です。
3. 来ていただくことになりやすい場面
決済(代金の受け取りと所有権の移転)です。ここには司法書士が入り、登記のために売主ご本人の意思と本人確認を行います。これは登記の真正を担保するための手続きなので、書面のやり取りだけで済ませるわけにいきません。
ただし、方法はいくつかあります。
- 司法書士に出張してもらう:決済日より前に、お住まいの近くまで司法書士が伺って本人確認と書類の作成を済ませ、決済当日は買主側だけで行う形です。出張の費用はかかりますが、往復の交通費と日程調整を考えると、こちらのほうが軽く済むことがあります。
- お住まいの地域の司法書士に依頼する:面識のある先生がいる場合など、地元で本人確認を受ける方法です。
- 代理人を立てる:ご家族などに委任する方法です。委任状、印鑑証明書、実印が必要で、買主側・金融機関側の了解も要ります。
どの形が取れるかは、買主側の事情(住宅ローンを使うか、どの金融機関か)にもよります。売り出しの段階で「売主は遠方」と伝えたうえで進めるので、決済の直前に慌てることはありません。
ご実家がいまどうなっているか分からない、という段階でも大丈夫です。住所だけで相場の目安が出ますし、現地は当社が見に行きます。
この件について相談する4. 現地の確認は、こちらで代わりにできます
遠方の方にとって、いちばん困るのは「いまどうなっているか分からない」ことだと思います。長く行っていないご実家なら、なおさらです。
当社は品川区西品川に事務所があり、大崎・戸越・大井・荏原あたりまでは歩いて回れる範囲です。対応エリアにも書いていますが、この距離を大事にしているのは、こういうときにすぐ行けるからです。
現地では、前の道の幅、隣地との境の様子、越境しているものがないか、建物の傷み、雨漏りの跡、残置物の量といったところを見て、写真と所見をお送りします。売り出す前に整理しておいたほうがよい点があれば、その段階でお伝えします。
役所での調査(道路の種別、用途地域、上下水道の引き込み、過去の建築確認の履歴)のうち、用途地域や道路の種別は区のオンライン地図「しながわMAP」でも確かめられますが、窓口でしか出ない情報や個別の確認は現地でなければできない部分です。ここは当社が動きます。
5. 売れるまでの間、家をどうするか
売り出してから決済までは、数か月かかることがあります。その間、空き家をどうするかは決めておいたほうがよい点です。
郵便物が溜まると空き家だと分かりやすくなりますし、庭木が伸びると近隣からの苦情の元になります。定期的な換気と通水も、建物の傷みを遅らせます。遠方だと通えないので、この部分は管理を委託するか、こちらでできる範囲を引き受けるかになります。売却をお預かりしている間の見回りは、当社で対応できます。
持ち続けた場合にかかる費用は空き家の維持費の記事で整理していますので、あわせてご覧ください。
6. 品川の実家ならではの点
品川区の古い住宅地には、遠方からだと気づきにくい論点が出やすい、という特徴があります。
- 借地であることがある:土地は地主さんのもので、建物だけがご実家の名義、というケースです。権利証や毎年の地代の記録を確認する必要があります。
- 前の道が狭い:幅が4メートルに満たない道に接している場合、建て替えの前提が変わります。役所での道路調査が要ります。
- 境界がはっきりしていない:古い分譲地では境界標が失われていることがあり、測量が必要になる場合があります。
- 敷地が細長い・間口が狭い:買い手の層が変わるため、売り出し方も変わります。
これらは「難しい」と言われる物件の記事で扱っている論点と重なります。遠方から電話で「いくらですか」とだけ聞かれた会社が、こうした点を織り込まずに数字を出すと、後で話が食い違います。まず現地を見てからにさせてください、と申し上げるのはそのためです。
よくあるご質問
Q. 海外に住んでいます。それでも売れますか?
A. 売れますが、国内在住の方より書類が増えます。印鑑証明書の代わりに署名証明(サイン証明。大使館や領事館で取得)を、住民票の代わりに在留証明を用意します。いずれも日本国籍の方向けの証明で、外国籍の方は必要書類と取得先が別になります。取得に日数がかかるので、売り出しの段階から準備を始めておくと決済で待たされません。買主側の金融機関によって求められる書類が変わることもあるため、早めにご相談ください。
Q. 鍵を持っていません。実家に入れないのですが。
A. 鍵の紛失は珍しくありません。所有者であることを確認できれば、鍵屋に開錠してもらい、鍵を交換するのが通常の流れです。当社で手配できます。なお、名義がまだ亡くなった方のままの場合は、相続人であることを示す書類が必要になります。
Q. 何度も足を運べないので、片付けだけでも頼めますか?
A. 残置物の処分は提携の業者へお取次ぎできます。見積もりを取り、内容をご確認いただいたうえで進めます。形見分けなど、ご自身で確認したいものがある場合は、その部分だけ写真でお送りして判断していただく形も取れます。全部を一度に決めなくて大丈夫です。
Q. 遠方だと、地元の不動産会社に頼んだほうがよいのでは?
A. 売却の依頼先は、物件のある地域の会社を選ぶほうが有利です。相場の判断、役所調査、内見の立ち会い、現地でしか分からない点の確認は、その土地で動いている会社のほうが精度が上がります。ご相談やご報告は電話・メール・オンラインでできますので、お住まいとの距離はあまり問題になりません。
出典・参考
- 国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」
- 国土交通省 報道発表「不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります」
- 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第34条の2・第35条・第37条|e-Gov法令検索
宅地建物取引士が執筆し、株式会社ユーエスハウジングが監修しています。祖父が西品川で開いた質屋「越後屋」から三代、この街で商売を続けてきました。品川区西品川の事務所を中心に、大崎・戸越・大井・荏原など歩いて行ける範囲を大事にしながら、相続・空き家のご売却を媒介(仲介)でお手伝いしています。当社は買い取る会社ではなく、売る側に立つ仲介の会社です。
おうち健診は住所を入れるだけで、参考相場と所見が出ます。連絡先の入力欄がないので、お住まいがどこでも営業の電話はかかりません。現地を見てほしい段階になったら、こちらから伺います。
この件を相談する(無料) おうち健診(連絡先不要)※本記事は2026年7月31日時点の一般的な情報のご提供を目的としたものです。電子交付やIT重説の可否は取引の相手方のご承諾や金融機関の運用によって異なり、決済の進め方も個別の事情で変わります。海外在住の場合に必要な書類は、居住国や在外公館の取り扱いにより異なります。実際の手続きは、担当の司法書士および取引の関係者とご確認ください。