GUIDE|売却の基礎知識

品川区で「再建築不可」の実家を売るには

相続した実家を売ろうとしたら、「前の道が狭いので建て替えられません」「再建築不可なので値段がつきにくいです」と言われた。品川区の路地の奥では、めずらしくない場面です。ただ、実務でお手伝いしていると、この言葉が役所調査の前に、つまり確かめる前に使われている場面に、たびたび出会います。確かめ方と、売り方の道筋を順番に整理します。

2026年8月3日時点の情報です。法令・制度は改正されることがあります。

結論:「再建築不可」は、確かめてから受け入れる言葉です。役所調査の結果しだいで、売り方も値段も変わります。
  • 前面の道が42条2項道路なら、セットバック(敷地の後退)を前提に、原則として建て替えができます。「狭い道=再建築不可」ではありません。
  • 接道の要件を満たさない敷地にも、43条2項の認定・許可という個別審査の道があります。
  • 本当に再建築不可でも、隣地の方・利回りで考える買い手・直して使う買い手など、買い手はいます。探し方が通常と違うだけです。
  • 2025年4月の法改正で、木造2階建ては大規模なリフォームにも確認申請が必要になりました。「いざとなれば直せばいい」という以前の常識は見直しが必要です。

1. 品川区に「再建築不可」が多い理由

建築基準法には「接道義務」という決まりがあります。原則として、建築基準法上の道路(原則幅員4メートル以上)に敷地が2メートル以上接していないと、新しく建物を建てることができません(建築基準法43条)。

接道義務の図解。左=建築基準法上の道路(幅員4m以上)に2m以上接している敷地は建て替えできる。右=間口が2m未満の旗竿地は、そのままでは建て替えられない
接道義務:道路に「2m以上」接しているかが分かれ目になります

ところが品川区の住宅地には、戦前からの市街地や、戦後まもなく形づくられた街並みがそのまま残っている場所が多くあります。幅4メートルに満たない路地、車が入れない通路の奥の家、旗竿状の敷地。区がこうした幅の狭い道を「細街路」と呼んで拡幅整備の制度を設けていること自体が、それだけ数が多いことの裏返しです。豊町・二葉・戸越・中延・旗の台・西大井、そして当社のある西品川など、区内の一部地区は、老朽木造住宅の建て替えを促す東京都の「不燃化特区」にも指定されています。

つまり品川区で実家を相続すると、「接道」の問題に出会う確率がもともと高いのです。これは特別に不運なことではなく、この街の成り立ちそのものです。だからこそ、確かめ方と道筋を知っているかどうかで、結果に差が出ます。

2. まず確かめる|本当に再建築不可か

実務でまずお伝えしたいのはこれです。「再建築不可」という言葉を、役所調査の前に確定させないでください。確かめると前提が変わるケースが、実際にあります。

前面の道が「42条2項道路」なら、原則として建て替えができます

幅4メートル未満の道でも、建築基準法の施行時(昭和25年)などの時点で既に建物が立ち並んでいた道で、特定行政庁が指定したものは「42条2項道路」(いわゆる、みなし道路)として建築基準法上の道路に含まれます。この場合、道路の中心線から2メートル(道の片側ががけや川などの場合は、がけ・川側の道路境界線から4メートル)の線まで敷地を後退させる、いわゆるセットバックを前提に、原則として建て替えができます。

セットバックの図解。①ふつうの42条2項道路では、道路の中心線から2mの線まで敷地を後退させる。後退した部分は道路の扱いになり、塀や門も置けない。②道の片側ががけ・川の場合は、がけ・川側の道路境界線から4mの線まで、こちら側だけで後退して4mを確保する
セットバック:ふつうは中心線から2m。片側ががけ・川なら、がけ側の境界線から4m

敷地は後退した分だけ小さくなりますが、「建て替えられない土地」と「セットバックすれば建て替えられる土地」では、買い手の層も値段の付き方もまったく違います。品川区では、細街路に接する敷地で建築確認申請をする前に、後退部分の整備について区との協議(事前協議)が必要です。整備費用の一部を助成する制度もあります。

間口が2メートルに足りない|本当に足りないのか

「間口が2メートルにわずかに足りない」という敷地でも、古い資料の数字と実測がずれていることはありますし、数十センチであれば、隣地から買い増す・借りるといった調整で要件を満たせる場合もあります。通路を複数の家で共有している場合は、持分や通行・掘削の承諾といった権利関係の整理もあわせて進めます。なお旗竿状の敷地では、東京都建築安全条例により、路地状部分の長さが20メートル以下なら幅2メートル以上、20メートルを超えるなら3メートル以上(延べ面積200平方メートル超の木造などではそれぞれ3メートル・4メートル)が原則として必要で、道路との接点だけを広げても足りないことがあります。

43条2項の認定・許可という道

接道の要件をどうしても満たせない敷地にも、建築基準法43条2項に基づく個別審査の道があります。幅4メートル以上の道(農道など)に2メートル以上接する場合などの「1号認定」と、敷地の周囲に広い空地があるなどの事情を特定行政庁が建築審査会の同意を得て認める「2号許可」です。どちらも個別の審査で、必ず認められるものではありませんが、過去にこの道で建築が認められた例のある場所かどうかは、役所調査で手がかりがつかめます。

ここまでの確認は、区役所の窓口をまわる根気のいる作業ですが、売り出す前に必ず通るべき道です。当社では売却のご相談をいただいた際、この役所調査からお手伝いしています。

前面の道の種別がどうなっているか、まず現在地を知りたい方へ。住所を入れるだけで参考相場が出ます。

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3. 2025年4月の法改正で変わったこと

再建築不可の物件では長らく、「建て替えはできないが、骨組みを残して大きく直すことはできる」という前提がありました。木造2階建て以下で延べ面積500平方メートル以下などの住宅は、大規模なリフォーム(大規模の修繕・大規模の模様替)をしても建築確認申請が不要だったからです(改正前の「4号建築物」という区分の扱いです)。再建築不可の家をほぼ新築同様に直して住む・貸すという使い方は、この仕組みの上に成り立っていました。

2025年4月に施行された改正建築基準法で、ここが変わりました。木造2階建て(および延べ面積200平方メートル超の平屋)は「新2号建築物」という区分になり、大規模の修繕・大規模の模様替にも建築確認申請が必要になりました。工事の可否そのものは改正前から法令と敷地の個別条件で決まっていましたが、確認申請の手続きを通るようになったことで、どこまでの工事が認められるかが実際に審査されるようになり、リフォーム前提で再建築不可を買っていた側(個人も事業者も)の見立ては、以前より慎重になっています。

売る側にとっての意味はシンプルです。「いざとなればフルリフォームで貸せばいい・売ればいい」という以前の常識のまま置いておくと、選択肢が静かに狭まっていくことがある、ということです。接道の要件を満たしていない建物でも、利用者が増える用途変更を伴わず、特定行政庁が安全上などの支障がないと認める大規模な修繕については、2024年4月から現行の接道規定を適用しない緩和の仕組みが設けられています(建築基準法施行令137条の12)。実際にどこまでの工事が可能かは、建築士や区の窓口への確認が必要ですが、「いつか」と思っている方ほど、前提が変わったことは知っておいてください。

4. 売り方の道筋|誰が買ってくれるのか

役所調査の結果、本当に再建築不可だったとしても、「売れない」わけではありません。建て替えを前提にした一般の買い手が対象から外れるだけで、この条件でも買う理由のある買い手がいます。

  • 隣地の所有者:無接道の土地も、接道のある隣の土地と一体になれば、普通の土地として使えるようになります。庭を広げる・駐車場にする・将来の建て替えで敷地を広く使う。隣地の方にとってだけは、その土地に特別な価値があります。実務でも、まず検討すべき相手です。
  • 隣地から買い増して、接道を確保してから売る:逆に、こちらが隣地の一部を買い増す・借りることで接道の要件を満たし、「建て替えできる土地」にしてから売り出す道筋です。手間はかかりますが、土地の評価が根本から変わり得ます。
  • 賃貸の利回りで考える買い手:直して貸した場合の家賃収入から逆算して値段を考える、投資目的の買い手です。再建築不可は住宅ローンが使いにくいため、現金で買える相手が中心になります。
  • 直して自分で使う買い手:立地が良ければ、建て替えできなくても「この場所に住みたい」という買い手はいます。ただし前の章のとおり、2025年の改正でリフォームの前提が変わったため、工事の範囲の見極めが以前より大切になっています。

大事なのは、誰に向けて売るかで、値段の付き方が変わることです。「再建築不可だから相場の半分」といった一律の割引で決まるものではありません。買取業者1社の提示だけを見て決めてしまう前に、道筋を並べて比べる価値があります。

5. 品川区で使える制度

品川区には、こうした敷地・建物に関わる助成制度があります。売る前の整理にも、買い手への説明材料にもなります。

  • 細街路拡幅整備事業:幅の狭い道に接する敷地で建て替えなどを行う際、後退部分の整備について確認申請前に区と協議し、整備にかかった費用の一部について助成を受けられる制度です。
  • 不燃化特区支援制度:豊町・二葉・戸越・中延・旗の台・西大井・西品川などの一部地区が対象で、古い木造建築物の解体(除却)や建て替えにかかる費用の一部を助成する制度です。老朽化した空き家の解体費は売却の手残りに直接効いてきますから、対象地区にお持ちの方は確認する価値があります。新たに、未接道の敷地や狭小な敷地を隣の接道地と一つにまとめる(敷地統合)際や、接道の要件を満たすために通路の敷地を取得する際の測量費・登記費・仲介手数料への加算助成も設けられました(耐火・準耐火建築物への建て替えが前提で、相続や贈与による取得は対象外など要件があります)。隣地の方が買い増す・こちらが通路を買い増す、どちらの道筋にも関わる制度です。

いずれも対象の地区・建物・期間に要件があり、内容は変わることがあります。実際に使えるかは品川区の窓口でご確認ください。当社でも、売却のご相談の中で該当しそうな制度をお調べしてお伝えしています。

6. 進め方

  1. 役所調査で前提を確定させる:前面の道の種別(42条2項道路かどうか)、過去の43条2項の認定・許可の取り扱い、計画道路の有無。ここが全ての出発点です。
  2. 実測と権利関係の整理:間口・通路の実測、通路の持分、通行・掘削の承諾、相続登記。買い手に説明できる状態に整えることが、そのまま売りやすさにつながります。
  3. 道筋を並べて比べる:隣地への打診、接道を確保してから売る場合の手間と効果、現況のまま売る場合の買い手の見立て。それぞれの手取りと期間を並べてから決めます。

当社は買取ではなく仲介で、売主側に立つ立場です。安く買うほど得をする仕組みではないので、「急いで手放したほうがいい」と申し上げる動機もありません。

よくあるご質問

Q. 前面の道が4メートルありません。もう建て替えはできないのですか?

A. 幅4メートル未満でも、建築基準法42条2項の道路(いわゆる、みなし道路)に当たる場合は、道路の中心線から2メートル(道の片側ががけや川などの場合は、がけ・川側の道路境界線から4メートル)まで敷地を後退させるセットバックを前提に、原則として建て替えができます。品川区ではこうした道を「細街路」と呼び、建築確認申請の前に区との協議が必要です。まず役所調査で前面の道の種別を確認するのが第一歩です。

Q. 間口が2メートルにわずかに足りないと言われました。

A. あきらめる前に、実測と隣地との調整を検討する価値があります。古い資料の数字と実測がずれていることはありますし、隣地から数十センチ分を買い増す・借りるなどの方法で接道の要件を満たせる場合もあります。通路の持分や通行・掘削の承諾など権利関係の整理とあわせて、順番に確かめていきます。

Q. 再建築不可のままでも、買う人は本当にいるのですか?

A. います。ただし、建て替えを前提にした一般の買い手ではなく、隣地の所有者(一体で使えば土地の価値が変わる)、賃貸に出して利回りで考える買い手、直して自分で使う前提の買い手などが中心です。住宅ローンが使いにくいため現金の買い手が多くなります。誰に向けて売り出すかで値段の付き方が変わるので、1社の買取提示だけで決めないことをおすすめします。

Q. チラシや前の売却相談で「再建築不可」と言われたので、そうだと思っています。

A. その「再建築不可」が役所調査まで行った結論なのか、外から見た印象なのかは分けて考える必要があります。前面の道の種別(42条2項道路かどうか)や、43条2項の認定・許可の可能性は、区役所での調査で確かめられます。調査の結果しだいで売り方も値段も変わりますから、確定していない段階で安い提示を受け入れてしまうのはもったいないです。

出典・参考

※いずれも2026年8月3日閲覧。制度の最新の内容は各機関のページでご確認ください。

この記事について

宅地建物取引士が執筆し、株式会社ユーエスハウジングが監修しています。祖父が西品川で開いた質屋「越後屋」から三代、路地の多いこの街で商売を続けてきました。借地・底地・無接道など、通常と進め方が違う物件のご売却を媒介(仲介)でお手伝いしています。当社は買い取る会社ではなく、売る側に立つ仲介の会社です。

私たちについて 対応エリア
「再建築不可」を、確かめる前に受け入れない

前の道の種別・間口の実測・使える制度。確かめてから決めても遅くありません。他社で「難しい」と言われたご実家も、権利関係と状態を拝見して、考えられる道筋を整理してお伝えします。

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※本記事は2026年8月3日時点の一般的な情報のご提供を目的としたものです。建て替えの可否・リフォームの範囲・助成制度の適用は、道路の種別・敷地の状況・各制度の要件など個別の事情により異なり、本記事の内容が建築の許認可や成約を保証するものではありません。具体的なご判断にあたっては、品川区の窓口、建築士、または当社にご確認ください。

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