GUIDE|売却の基礎知識

旗竿地の実家は、いくら安くなるのか

旗竿地は「2割は安くなる」とよく言われます。相続した実家がまさにその形で、査定額を見て、この2割がどこから来た数字なのか気になった方へ。当社は査定の計算方法を公開している会社なので、この「2割」も公開データで測ってみました。測って分かった数字と、実は率よりも値段を左右する「間口2m」の話をまとめます。

2026年9月27日時点の情報です。データ・法令は更新されることがあります。

結論:大田区の実成約では、旗竿地・袋地の戸建は整形地より23.2%低い水準でした(直近2年・60件・町名ごとの単価で比べた中央値の差)。「2割引き」は、おおむね実態に合う数字です。ただし大田区の戸建の集計なので、品川区の土地や一軒ごとの実家にそのまま当てはめる率ではありません。
  • 国の取引価格情報に載っているだけでも、同じ2年間に60件の取引があります(すべての取引を集めたデータではありません)。「売れない土地」ではありません。
  • 率よりも値段の土台を分けるのは間口です。通路のいちばん狭い所が2mあるか(竿の長さが20mを超えるなら3m)が、建て替えられるかの最初の分かれ目です。図面では接道して見えて、実測は1.7mだった例があります。
  • 税の評価は「かげ地割合」という物差しで測ります。当社の査定書も同じ表を使い、どの率を使ったかを書面に明記します。

1. 「2割引き」はどこから来た数字か

旗竿地(はたざおち)は、奥まった敷地(旗)と、道路までの細い通路(竿)でできた土地です。路地状敷地、敷地延長と呼ばれることもあります。

この形の土地が整形地より安くなること自体は、業界で広く共有されています。不動産の実務書や査定の解説では、整形地に比べて1〜3割低い水準が目安として語られています。その真ん中にあたるのが「2割引き」という言い方です。当社の査定でも、データが足りない地域では▲20%を目安に使っています。

ただ、この帯はあくまで経験則です。自分の実家の話となれば、「本当のところ、いくら下がるのか」を数字で確かめたくなります。そこで、当社の営業エリアとその周辺の実成約データで測りました。

2. 大田区の実成約で測ってみた

使ったのは、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の実成約データ(2026年8月時点の直近2年)です。場所の違いで数字がぶれないように、それぞれの成約単価を同じ町名の中央値との比に直したうえで、旗竿地・袋地の成約の群と、整形地の成約の群の中央値を比べました。件数が少ないとノイズが混ざるため、載せるのは群に30件以上あるものだけに絞っています。国土交通省のデータでは旗竿地は「袋地等」という形状の区分に含まれるため、表では「旗竿地・袋地」と書いています。

比べたもの整形地との差件数
旗竿地・袋地の戸建(大田区)▲23.2%60件(整形地739件と比較)
不整形の戸建(品川区)▲18.2%74件
不整形の土地(世田谷区)▲17.9%42件
不整形の土地(大田区)▲15.9%82件
不整形の土地(品川区)▲11.8%42件
不整形の戸建(大田区)▲7.9%114件

旗竿地・袋地の戸建は、整形地より23.2%低い水準でした。よく言われる1〜3割の帯の中に収まり、真ん中の「2割」よりはやや深い結果です。旗竿とまでいかない不整形の土地・戸建でも、1割弱〜2割ほど低くなっています。この差には、形のほかに広さや前面の道路、取引の事情の違いも混ざっていますが、形の崩れた土地の群にこれだけの差が出ています。

正直に書いておくと、品川区などの旗竿地は、率を出せるだけの件数(両群30件以上)がそろわず、今回は出せませんでした。少ない件数で出した率は当たっているように見えて信用できないので、測れた分だけを載せています。この実測は当社の査定の方法書で四半期ごとに更新を続けます(外れ値の除き方など、細かな手順もそちらに載せています)。

3. 「旗竿地は売れない」は本当か

上の表は、見方を変えると「売れた記録」でもあります。大田区だけで、旗竿地・袋地の戸建の取引が2年間に60件、国の取引価格情報に載っています(すべての取引を集めたデータではないので、実際はこれ以上です)。売れない土地ではなく、実際に買い手が付いている土地です。ただし、この件数だけで売りやすさや売れるまでの期間までは分かりません。

買う側の理由もはっきりしています。表通りから引っ込んでいるぶん静かで、車や人の視線が通らないこと。そして同じ予算で、整形地より一回り広い家に住めることです。減価の率は「欠点の値札」というより、「その分安く買える理由」として織り込まれた数字だと捉えるほうが、実態に近いと感じます。

4. 値段の分かれ目は、率より「間口2m」

ここからが、率の話より大事なところです。建築基準法は、建物の敷地が道路(原則として幅員4m以上=42条)に2m以上接することを求めています(43条・接道義務)。幅が4mに満たない道でも、42条2項道路と呼ばれる道はセットバックを前提に道路として扱われます。旗竿地の場合、道路に接している竿(通路)の入口の幅がこの「2m」に当たります。さらに東京都では、竿の部分そのものにも幅が求められます(下の条例)。これを満たさないと、原則としてそのままでは建て替えが難しくなり、値段は「2割引き」どころではない別の土台に移ります(例外の許可などもあるので、最後は一軒ごとの確認です)。

接道義務の図解。建築基準法上の道路(原則幅員4m以上)に2m以上接する敷地は、建て替えの前提となる接道義務を満たす。旗竿地は通路の幅が2mあるかどうかが分かれ目で、2mに満たないとそのままでは建て替えられない
旗竿地の「2m」は通路の幅のこと。いちばん狭い場所で測ります。

当社が実際に受けたご相談に、こんな土地がありました。図面の上では道路に接しているように見える。ところが現地で間口を測ると1.7mしかない。2mまで、あと30cmです。この30cmで建て替えの可否が変わるため、測量で間口と面積を確定させるまで、金額の提示そのものができませんでした。旗竿地の査定は、率を掛ける前に、まず間口の実測です。

東京にはもうひとつルールがあります。東京都建築安全条例は、竿の長さが20mを超える敷地では幅3m以上を求めています(20m以下なら2m以上。耐火建築物・準耐火建築物以外で延べ面積が200㎡を超える建物では、それぞれ3m・4mが要ります)。奥に長い旗竿地は、2mあっても足りない場合があるということです。区や市で細部の取り扱いが異なるので、最終的には役所の建築指導の窓口で確かめます。

もし間口が2mに満たなかったら。値段の考え方も売り方も変わりますが、道が無いわけではありません。再建築不可の実家を売るにはに、その場合の道筋を分けて書いています。

5. 税の評価は「かげ地割合」で測る

相続税の評価では、旗竿地や不整形地の減価を「かげ地割合」という物差しで測ります。正面の道路に沿って、土地の全体をすっぽり囲む長方形(想定整形地)を描き、その長方形のうち土地が欠けている部分(かげ地)の割合を出して、国税庁の「不整形地補正率表」に当てはめる方法です。かげ地割合が大きい住宅地では、最大4割引きまで補正される表になっています。

かげ地割合の図解。旗竿地の全体を囲む長方形(想定整形地)を描き、土地が欠けている部分がかげ地。かげ地の面積を想定整形地の面積で割った割合が大きいほど、不整形地補正率表の減価が深くなる
旗竿地は「欠け」が大きいので、かげ地割合も大きく出やすい形です。

市場の値段と税の評価は別物ですが、「形の崩れ方を割合で測る」という考え方は査定にもそのまま役立ちます。当社の査定書は、かげ地割合の入力があれば国税庁の表の実率で補正し、実成約から率を推計できる地域では実測の率を優先します。どの表のどの率を使ったかは書面に明記し、計算方法は方法書として公開しています。2割という言葉だけでなく、根拠ごとお渡しするための作りです。

6. 売る前にできること

旗竿地の売却で、値段と売りやすさに実際に効くのは次の4つです。

  • 間口と通路の幅を測る。2m前後の土地は、ここが建て替えの見通しと値段を決める前提になります。境界標があるかを先に確かめ、見当たらなければ測量から段取りします。境界まわりの進め方は境界がはっきりしない実家は売れるのかにまとめています。
  • 車が入るかを実測で言えるようにする。竿の幅が2m台前半だと、車種や曲がりの位置によっては乗用車が入らないことがあります。「入る・入らない・この車種なら入る」を実測で示せるだけで、買い手の一番の不安が減ります。
  • 通路の権利を確かめる。竿の部分が単独所有か、共有か、私道の持分か。通行や掘削の取り決めがあるか。登記と現地で確認し、あいまいなら書面に整えます。
  • 隣地に声をかける選択肢を持つ。隣の家から見ると、旗竿地は自分の土地と合わせれば整形地になる相手です。一部を買い増してもらう、一体で売る、といった形で「旗竿地でなくなってから売る」道があり、うまくはまれば減価そのものが消えます。当社は組み立ての段階から、この選択肢を検討に入れます。

よくあるご質問

Q. 間口が2mぴったりあるか、自信がありません。

A. まず測ることをおすすめします。図面と現地が食い違うことは珍しくありません。数十cmの差で建て替えの可否と値段の土台が変わるので、ここだけは推測で進めないのが安全です。境界標が見当たらない場合は、測量から段取りに含めてご案内します。

Q. 旗竿地でも住宅ローンは使えますか。

A. 建て替えができる旗竿地なら、形だけを理由に住宅ローンの対象から外れることは多くありません(金融機関ごとの基準はあります)。間口が2mに満たないなど、そのままでは再建築ができない土地は、住宅ローンを使える金融機関が限られやすくなります。買い手の資金調達に直接効くので、売る側にとっても「建て替えできるか」を先に確定させる意味は大きいです。

Q. 車が入らない旗竿地は売れませんか。

A. 買い手の層は狭まりますが、売れないわけではありません。駅に近ければ車を持たない方が候補になりますし、近くの月極駐車場を案内できれば不安は減ります。入るかどうか微妙な幅なら、実測の数字で示せるようにしておくのが早道です。価格には織り込む前提で、隠さないことが結局は売りやすさにつながります。

Q. 通路の一部が隣と共有になっています。

A. 通路(竿の部分)の権利は、値段と売りやすさに直接効きます。単独の所有か、共有か、私道の持分か、通行や掘削の取り決めがあるかを、登記と現地で確かめてください。共有や持分のままでも売却はできますが、買い手と金融機関への説明材料として、取り決めを書面にしておくと進めやすくなります。

出典・参考

※いずれも2026年8月16日閲覧。実測値は当社集計(直近2年の成約・町名内比の中央値比較・30件以上のみ)で、個別物件の査定額を示すものではありません。

この記事について

宅地建物取引士が執筆し、株式会社ユーエスハウジングが監修しています。祖父が西品川で開いた質屋「越後屋」から三代、路地の多いこの街で商売を続けてきました。相続した実家・空き家のご売却を媒介(仲介)でお手伝いしています。当社は買い取る会社ではなく、売る側に立つ仲介の会社です。

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住所を入れるだけで、連絡先なしで相場の幅が見られます。旗竿地・間口の事情を踏まえた見立ては、LINEかご相談で担当がお返しします。まだ売ると決めていなくて大丈夫です。

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※本記事は2026年9月27日時点の一般的な情報のご提供を目的としたものです。実測値は当社集計の統計で、個別物件の査定額・成約を保証するものではありません。建て替えの可否・条例の適用は敷地ごとの確認が必要で、最終判断は特定行政庁・建築士にご確認ください。税務の評価は税理士の領分です。具体的な売却の進め方は当社にご相談ください。

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