GUIDE|売却の基礎知識

境界がはっきりしない実家は売れるのか

実家を売ろうと相談したら、「まず境界の確定ですね」と言われた。現地を見ても杭のようなものは見当たらないし、隣との塀がどちらのものかも分からない。この状態で売却の話を進めていいのか。結論から言うと、売り方はあります。ただし「どう確かめて、どの契約の形で引き渡すか」で、かかる時間も費用も変わります。実務の順番で整理します。

2026年8月16日時点の情報です。法令・制度は改正されることがあります。

結論:境界がはっきりしなくても、売れなくなるわけではありません。決めるのは「どこまで確かめるか」と「どの契約の形にするか」の2つです。
  • 測量には種類があります。全ての売却に境界確定測量(隣地全員の立会い)が必要なわけではありません。
  • 売買契約で売主に求められるのは、多くの場合「境界の明示」です。確定測量図の交付とは別のものとして扱われます。
  • 事情によっては、登記簿の面積のまま取引する「公簿売買」という契約の形もあります。
  • 枝や塀の越境は、覚書(現状の確認・建て替え時の解消・次の持ち主への引き継ぎ)で整理するのが実務の型です。

1. 「境界がはっきりしない」の中身を分ける

ひとくちに「境界が分からない」と言っても、中身は3つに分かれます。どれに当たるかで、やることが変わります。

  • 境界標が見当たらない:図面上の境界は決まっているのに、現地の印(杭・金属標・鋲)が見つからない状態。実務でよく見るケースです。
  • 頼れる図面がない:法務局に地積測量図が備え付けられていない、あるいは古い時代のもので、いまの測量の精度と合わない状態。
  • 隣と認識が違う:塀や生け垣の位置と図面がずれている、どちらの持ち物か話がかみ合わない状態。ここだけは「人」の問題が混ざります。

最初にやることは2つです。法務局で地積測量図と公図を取ること、そして現地で境界標を探すこと。境界標は敷地の四隅と折れ点にあるのが基本で、コンクリート杭の頭の十字、塀の基礎に貼られた金属標、舗装に打たれた金属鋲など、形はいろいろです。塀の内側や土の下に隠れていることも多いので、「無い」と決める前に、塀の両側と地面の際まで見ます。

境界標を探す場所の見取り図。敷地の四隅と折れ点に、コンクリート杭・金属標・金属鋲などの印がある。見つからない角は塀の内外や舗装の下も確かめる
境界標は四隅と折れ点。塀の基礎や舗装に隠れていることもよくあります

実務では、登記簿の面積と実測がわずかに違う、境界の点の位置が数センチずれている、といった場面は珍しくありません。古い時代の測量と、いまの測量の精度が違うためで、それ自体は異常なことではありません。大事なのは、ずれがあると分かったときに「どう扱うか」を決めてから売り出すことです。

2. 測量の種類|現況測量と境界確定測量

「測量してください」と一言で言っても、中身は大きく2段階に分かれます。

  • 現況測量:いまある塀・杭・建物の位置をそのまま測る測量です。隣地の立会いを取らないため短期間ででき、売り出し前に「おおよその形と広さ」をつかむ目的で使います。ただし、ここで出た面積は隣地と合意した境界に基づくものではありません。
  • 境界確定測量:隣地の所有者や道路の管理者(官民の境界)と現地で立会いを行い、境界を確認したうえで測る測量です。確認の証しとして、隣地の方に境界確認書(筆界確認書)へ署名をいただきます。関係者の予定を合わせながら進むので、数か月単位の期間を見込みます。道路(官民)との境界確定が入る場合は、半年ほどかかることもあります。

境界確定測量まで済んでいる土地は、買主にとって安心材料が多く、売りやすくなります。一方で、時間と費用がかかりますし、隣地の協力が前提です。「全部の売却に境界確定測量が必要」なのではなく、物件と買主に合わせてどこまでやるかを決めるのが実務です。測量を担うのは土地家屋調査士で、費用は敷地の形・隣接する土地の数・道路との関係で大きく変わるため、実際の見積りで確かめます。

測量の話の前に、まず「いくらぐらいの土地なのか」を知りたい方へ。住所を入れるだけで参考相場が出ます。

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3. 契約の形|実測売買と公簿売買

境界の話は、最後は売買契約の書き方に落ちてきます。代表的な形が2つあります。

  • 実測売買:測量で確定した面積に単価を掛けて代金を決める(または、契約後の測量で面積が変われば精算する)形です。面積の食い違いがお金で精算されるので、買主に説明しやすい形です。
  • 公簿売買:登記簿に書かれた面積のまま代金を確定し、実測との差があっても精算しない形です。測量を待たずに進められる一方、面積の差は双方が受け入れる前提になるので、契約前の説明と合意が欠かせません。

あわせて知っておきたいのが、売買契約で売主に求められるのは、多くの場合「境界の明示」だということです。引き渡しまでに、現地で「ここが境界です」と買主に示す義務で、確定測量図を交付することとは別のものとして扱われます。境界標が残っていて隣地との認識も一致していれば、この明示は難しいことではありません。逆に、標が失われている場合は復元が要るので、測量の話に戻ってきます。

どの形になるかは、買主が誰かでも変わります。ご自宅として買う個人の方が住宅ローンを使う場合と、事業者が買う場合では、求められる書類の水準が違います。実務では、測量の有無や境界確認書のそろい方が、買主の提示する条件や価格に織り込まれる場面もあります。だからこそ、「測量するかどうか」を先に決め打ちせず、進め方ごとの手取りと期間を並べてから選ぶことをおすすめします。

4. 越境していたら|覚書の3点セット

境界を確かめると、今度は「越境」が見つかることがあります。隣の木の枝がこちらに伸びている、こちらの雨樋が隣の上空にわずかに出ている、ブロック塀が境界線をまたいでいる。古くからの住宅地では、ごく普通にあることです。

すぐに解消できるもの(枝の剪定など)は解消してから売り出すのが基本です。木の枝については、2023年4月に施行された民法233条の改正で、越境された土地の所有者が竹木の所有者に切除を催告しても相当の期間内に切除されないとき、所有者が分からない・所在が知れないとき、急迫の事情があるときには、自ら枝を切り取れるようになりました。それでも実務では、まず隣地の方に声をかけて剪定をお願いするのが円満です。売却の前は、隣地との関係を良く保つこと自体が財産になります。

建物や塀のように、すぐには解消できない越境もあります。この場合は、「覚書」を交わして次の持ち主に引き継ぐのが実務の型です。書く中身の核は、次の3点です。

  1. 越境の現状を双方が確認したこと
  2. 建て替えなどの機会に解消すること
  3. この約束を、それぞれの次の所有者にも引き継ぐこと

買主が住宅ローンを使う場合、金融機関がこの覚書の有無や中身を確認することがあります。売り出してから慌ててまとめるより、売り出す前に整えておくほうが、交渉の場面で強くいられます。

5. 隣と話がまとまらないとき|筆界特定制度

境界確認の立会いをお願いしても、応じていただけないことがあります。理由はさまざまで、長年の感情のもつれもあれば、相続で所有者が増えて、そもそも連絡が取れないこともあります。

それでも、道が全て閉じるわけではありません。ひとつは3章で見たとおり、契約の形を工夫すること(公簿売買として進める、境界確認書がそろわない前提で買主と条件を組む)。もうひとつが、筆界特定制度です。土地の所有者などの申請に基づいて、法務局の筆界特定登記官が、外部専門家(筆界調査委員)の意見を踏まえ、現地における筆界の位置を特定する制度です。裁判ではないので、訴訟よりも使いやすい手続きとして設けられています。

ひとつ注意があります。筆界特定制度が明らかにするのは筆界(登記された土地の区画の線)であって、所有権の範囲そのものを決める制度ではないことです。塀の所有や土地の時効取得のような「所有権の争い」が本題の場合は、弁護士に相談する場面になります。当社のお手伝いでも、法律の争いが本題になったときは、お付き合いの先生がいればその先生へ、いなければ提携の専門家へおつなぎして、当社は不動産の実務に徹します。

6. 進め方

  1. 資料を集める:法務局で登記事項証明書・公図・地積測量図。あるかないか、いつの時代のものかで、次の一手が変わります。
  2. 現地で境界標を探す:四隅と折れ点、塀の両側、舗装の際。写真に残しておくと、後の説明が楽になります。
  3. 隣地との関係の温度を見る:立会いをお願いできる関係か。ここが測量の進め方と契約の形の分かれ目になります。
  4. 進め方ごとの手取りと期間を並べる:境界確定測量まで行う場合、現況測量にとどめる場合、公簿売買で進める場合。それぞれの費用・期間・買主の見え方を並べてから決めます。

当社は買取ではなく仲介で、売主側に立つ立場です。境界の整理は地味な工程ですが、ここが片づいている土地は、買主への説明が短くて済みます。売るかどうかを決めるのは、名義と境目が片づいてからで間に合います。

よくあるご質問

Q. 測量していないと、実家は売れないのですか?

A. 売り方はあります。境界を全て確定させてから引き渡すのが基本形ですが、事情によっては、登記簿の面積のまま取引する公簿売買という形を買主と合意して進める方法もあります。ただし、買主が誰か(個人か事業者か)、住宅ローンを使うかで求められる水準は変わります。どの形が向くかは物件次第なので、まず境界標が現地に残っているかを見るところから確かめます。

Q. 境界標がどこにも見当たりません。

A. 珍しいことではありません。塀の基礎の内側に隠れている、舗装の下に埋まっている、工事の際に失われている、といったことがよくあります。まず法務局で地積測量図があるかを確かめ、現地では敷地の四隅と折れ点、塀の内外を見ます。見つからない場合は、土地家屋調査士が資料と測量から本来の位置を割り出し、隣地の立会いを経て境界標を復元します。

Q. 隣の方が立会いに応じてくれません。

A. 境界確認書がそろわなくても、道が全て閉じるわけではありません。契約の形を公簿売買に切り替えて進められる場合があります(この場合も、現地でどこまで境界を示せるか、示せない部分をどう扱うかは、買主の了承を得て契約で定めます)。また、筆界の位置そのものに争いがあるなら、法務局の筆界特定制度という手続きもあります。裁判をしなくても、筆界特定登記官が資料と調査に基づいて筆界の位置を示す制度です。どの道を選ぶかは、買主の条件と期限を見ながら決めます。

Q. 測量の費用は誰が負担するのですか?

A. 売主が負担する取り決めが多いですが、法律で決まっているものではなく、契約でどちらが負担するかを定めます。そもそも境界確定測量まで行うのか、現況測量にとどめるのか、公簿売買にして測量を行わないのかで、かかる費用と期間が大きく変わります。買主との条件交渉の一部として、進め方ごとの負担を並べてから決めるのが実務の順番です。

出典・参考

※いずれも2026年8月16日閲覧。制度の最新の内容は各機関のページでご確認ください。

この記事について

宅地建物取引士が執筆し、株式会社ユーエスハウジングが監修しています。祖父が西品川で開いた質屋「越後屋」から三代、路地の多いこの街で商売を続けてきました。境界・越境・借地・底地など、整理してから売る物件のご売却を媒介(仲介)でお手伝いしています。当社は買い取る会社ではなく、売る側に立つ仲介の会社です。

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境界の不安は、確かめる順番が分かれば小さくなる

図面の有無・境界標・隣地との関係。どこまで確かめてから売り出すかは、物件ごとに違います。いまの状態を拝見して、どの進め方だと手元にいくら残るか、期間と一緒にお伝えします。

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※本記事は2026年8月16日時点の一般的な情報のご提供を目的としたものです。境界の確定・測量の要否・契約の形・覚書の内容は、土地の状況・隣地との関係・買主の条件など個別の事情により異なり、本記事の内容が成約や手続きの結果を保証するものではありません。境界・登記の専門的な判断は土地家屋調査士・司法書士・弁護士にご確認いただき、具体的な売却の進め方は当社にご相談ください。

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